2022年07月01日 遺産分割
Rさんのお姉さんが亡くなりました。
お姉さんは結婚されたことがなく、お子さんもいません。ご両親も亡くなっているため、法定相続人はご兄弟(Rさんと弟さんの2人)です
姉さんが亡くなった後、弟の代理人弁護士からRさんに、「100万円を支払うので、『全ての遺産を弟が相続する』内容の遺産分割協議書に署名押印してもらいたい」という手紙が届きました。お姉さんの遺産として何があるのかは全くわからないままです。不審を感じたRさんが何も反応せずにいたところ、弟は遺産分割調停の申立を行い、Rさんは当事務所に依頼をされました。
弟は調停申立にあたり「遺産目録」を作成して提出していましたが、念のためこちらでも遺産の調査を行いました。その結果、お姉さんが多額の死亡保険金が支払われる保険に加入し、その受取人を「弟」に指定していたこと、この契約に基づき弟が数千万円の死亡保険金を受け取っていることがわかりました。
死亡保険金は、原則として遺産ではありません。そのため、本来であれば、弟がどれだけ多額の保険金を受け取っていても、それとは無関係に遺産は2分の1ずつ分けるだけなのですが、例外的に「死亡保険金も遺産となる」場合があります。
Rさんのケースでは、死亡保険金が多額で、その額は遺産総額(死亡保険金を除く)の約70%相当でしたし、お姉さんは突然亡くなられたため、弟がお姉さんのために特別尽くした(したがって、これくらいの死亡保険金を遺産とは別に受け取っても不公平ではない)というほどの事情も見当たりませんでした。そのため、最高裁判例を引いて「死亡保険金も遺産分割の対象」と主張しました。
弟側は勿論「死亡保険金は遺産ではない」と主張しました。このまま審判か…(新しい判例ができるかも)と思われましたが、裁判所から調停案の提示があり、Rさんも弟も「裁判所からの提案であれば受け入れる」ということで、調停が成立しました。
(当時を振り返って)
裁判所からの調停案は、死亡保険金のうち約50%を遺産分割対象とする内容でした。審判が出ていればどんな内容だったのか、どちらが勝っても負けた方は不服申立をしたでしょうから、今度は高裁でどのような判断が行われたか、弁護士としては「見てみたかった」と思います。
なお、Rさんは初め、「遺産として何があるかの説明もなく、100万円を払うので実印を押して印鑑証明書を送ってくださいという手紙が届いたので、詐欺ではないかと思いました」、「こういう進め方が普通なんでしょうか?」と非常に怪しまれていました。 これがスタンダードなやり方かどうかはわかりませんが、よく見るので、稀ではないように思います。「争うのはしんどい」等と思われてすんなり合意される場合もあるのかもしれませんが、疑心暗鬼になられて対立がどんどん深まるケースもあります。なお、こういった手紙が届いた場合、「法律の専門家から提示された案なのだから、法律的に正しい内容で、争っても無駄なのだろう」と思われる方もいますが、そうとは限りません。一度はご自身でも弁護士への相談をされた上で、検討、回答することをお勧めします。
お姉さんは結婚されたことがなく、お子さんもいません。ご両親も亡くなっているため、法定相続人はご兄弟(Rさんと弟さんの2人)です
姉さんが亡くなった後、弟の代理人弁護士からRさんに、「100万円を支払うので、『全ての遺産を弟が相続する』内容の遺産分割協議書に署名押印してもらいたい」という手紙が届きました。お姉さんの遺産として何があるのかは全くわからないままです。不審を感じたRさんが何も反応せずにいたところ、弟は遺産分割調停の申立を行い、Rさんは当事務所に依頼をされました。
弟は調停申立にあたり「遺産目録」を作成して提出していましたが、念のためこちらでも遺産の調査を行いました。その結果、お姉さんが多額の死亡保険金が支払われる保険に加入し、その受取人を「弟」に指定していたこと、この契約に基づき弟が数千万円の死亡保険金を受け取っていることがわかりました。
死亡保険金は、原則として遺産ではありません。そのため、本来であれば、弟がどれだけ多額の保険金を受け取っていても、それとは無関係に遺産は2分の1ずつ分けるだけなのですが、例外的に「死亡保険金も遺産となる」場合があります。
Rさんのケースでは、死亡保険金が多額で、その額は遺産総額(死亡保険金を除く)の約70%相当でしたし、お姉さんは突然亡くなられたため、弟がお姉さんのために特別尽くした(したがって、これくらいの死亡保険金を遺産とは別に受け取っても不公平ではない)というほどの事情も見当たりませんでした。そのため、最高裁判例を引いて「死亡保険金も遺産分割の対象」と主張しました。
弟側は勿論「死亡保険金は遺産ではない」と主張しました。このまま審判か…(新しい判例ができるかも)と思われましたが、裁判所から調停案の提示があり、Rさんも弟も「裁判所からの提案であれば受け入れる」ということで、調停が成立しました。
(当時を振り返って)
裁判所からの調停案は、死亡保険金のうち約50%を遺産分割対象とする内容でした。審判が出ていればどんな内容だったのか、どちらが勝っても負けた方は不服申立をしたでしょうから、今度は高裁でどのような判断が行われたか、弁護士としては「見てみたかった」と思います。
なお、Rさんは初め、「遺産として何があるかの説明もなく、100万円を払うので実印を押して印鑑証明書を送ってくださいという手紙が届いたので、詐欺ではないかと思いました」、「こういう進め方が普通なんでしょうか?」と非常に怪しまれていました。 これがスタンダードなやり方かどうかはわかりませんが、よく見るので、稀ではないように思います。「争うのはしんどい」等と思われてすんなり合意される場合もあるのかもしれませんが、疑心暗鬼になられて対立がどんどん深まるケースもあります。なお、こういった手紙が届いた場合、「法律の専門家から提示された案なのだから、法律的に正しい内容で、争っても無駄なのだろう」と思われる方もいますが、そうとは限りません。一度はご自身でも弁護士への相談をされた上で、検討、回答することをお勧めします。