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相続・遺言・離婚・借金問題を解決する熊本の「弁護士法人ときわ法律事務所」

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2022年10月07日 遺産分割

Qさんのお父さんが亡くなりました。お父さんは、Qさんのお母さんとは随分前に離婚されていて独り身、お子さんは長男・次男(Qさん)・長女の3人です。
お父さんの四十九日に、長男は「跡取りである俺が全ての遺産を相続する。この紙に署名押印をして印鑑証明と一緒に渡すように」と一方的に求めました。Qさんは「さすがにそのやり方はないだろう」と怒り、「兄貴とは縁を切るつもりで徹底的に争います。遺産はきちんと3分の1もらいたい」といらっしゃいました。

この件では、初めから遺産分割調停の申立を行いました。
お父さんの遺産は、自宅不動産のみです。
お父さんは亡くなるまで自宅で独り暮らしをしていましたが、お父さんが亡くなるといつの間にか長男家族が引っ越してきて、住むようになりました。長男は遺産である不動産をなし崩し的に自分の物にしようとしているとしか思えず、Qさんとしては非常に腹立たしいのですが、Qさんは既にご自身の家があるので、「どうしても遺産である不動産が欲しい」とは思っていません。
長女とも相談の上で、こちらからは長男に以下の分割案を提示しました。
① 不動産は長男が相続する。不動産業者の査定によれば遺産である不動産の時価は1500万円なので、長男は次男(Qさん)と長女に、代償金として500万円ずつ支払う。
② 長男が代償金を支払えない場合、遺産である不動産は売って、売買代金を3人で平等に分ける。

長男の回答は、「①の方向で進めたいが、自分が不動産業者に査定を依頼したところ、不動産の時価は1200万円だったので、次男(Qさん)と長女には400万円ずつ支払う」というものでした。
唯一の争点となった「不動産の価額」をめぐってお互いに主張や疎明資料を出し合い、何度か調停期日を重ねることになりました。「鑑定」という言葉も双方から出ましたが、鑑定費用はかなり高額であるため、費用対効果を考えると、双方ともできれば避けたいというのが実情です。
最終的に、裁判官から「双方の主張額の間を取る」形での調停案が提示され、3人ともこれを受け入れて、調停が成立しました。

(当時を振り返って)
遺産分割調停では、遺産に不動産がある場合、ほぼ必ずといっていいほど「不動産の時価はいくらか?」が問題となり、争われます。
この件については「不動産の価額はどうやって決める?(遺産分割)」もご参照ください。

「最後は裁判所が『この不動産はいくら』と決めてくれるんでしょう?」と思ってらっしゃる方が多いと思うのですが、通常はなかなかそうはなりません(鑑定が行われた場合は別です)。
この事例で裁判所から調停案が出たのは、「裁判所から調停案が出れば、Qさんも長男もおそらく受け入れるだろう」という雰囲気が濃厚であったことに加えて、担当裁判官のカラーもあったかと思います。なお、調停案が出た際、裁判所からは「もし調停が不成立になって審判となった場合、不動産の価額についてこの調停案と同じ判断が行われる保証は一切ない」と念を押されました。

関連URL: https://www.tokiwa-law.info/page/press/41/

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