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相続・遺言・離婚・借金問題を解決する熊本の「弁護士法人ときわ法律事務所」

相続・遺言・離婚・借金問題を解決する熊本の「弁護士法人ときわ法律事務所」

2020年06月05日 相続・遺言

「この書類にサインして実印を押して」,「印鑑証明書を渡して」と言われ,言われたとおりにしたのだけれど,「不公平な内容だし,話し合いもなく一方的に押し付けられたものだから,きちんと話し合いたい。やり直したい」といったご相談がよくあります。
しかし,「この遺産を誰が相続する」という内容の文書に署名をし,実印を押して,印鑑証明まで渡してしまっていると,「そんな内容とは知らなかった」,「そもそも話し合いをしていない」,「遺産分割協議書などというものに署名した覚えはない」と言っても,なかなか通りません。
ご自身に相続の権利がある方(ご兄弟や配偶者など)が亡くなった場合,誰かに言われるがまま「書類にサインをする」,「印鑑を押す」,「印鑑証明書を渡す」といったことは,絶対にしてはいけません。亡くなった直後は動揺されていると思いますので,「財産」に関することは少し時間を置いて,落ち着いてから考えましょう。また,むやみに「急がないといけない」,「税務署や市役所に書類を出さないといけない。期限があるから早くしてくれ」などと言われた場合は,自分でも「本当にそこまで急がないといけないのか」と調べてみたり,専門家に相談してみた方がよいかもしれません。

1 「やり直し」ができる場合
「やり直し」ができる場合はとても限定されています。
① 遺産分割協議が「無効」である場合
② 遺産分割協議を「取り消す」べき理由がある場合
③ 相続人全員が「やり直し」に同意した場合

2 具体的には…
① 遺産分割協議が「無効」である場合
たとえば,以下のような場合です。
・相続人のうち一人でも参加していない人がいる。
・相続人ではない人が参加している。
・相続人の中に,重度の認知症や精神疾患,意識不明などのため「遺産分割」について検討・判断できる状態ではない方がいるのに,家族や他の相続人が勝手にこの方の署名押印をしてしまった。

「無効」である場合は,そもそも「遺産分割協議」は有効に成立していません。
ただ,「無効である」ことを認めず,「遺産分割協議はちゃんと成立したんだから,もう話し合いなんて必要ない」と主張する相続人が一人でもいれば,「もう一度ちゃんと話し合う」ことも難しいでしょう。そうなると,「遺産分割協議が無効である」ことを確認するための訴訟を起こすことが必要になります。

② 遺産分割協議を「取り消す」べき理由がある場合
たとえば,相続人Aが相続人Bに対し,嘘をついて騙したり,脅して怖がらせたりした結果,相続人Bが「遺産分割協議」に応じた(騙されたり怖かったりしなければ,応じなかった)といった場合です。
こういった場合,相続人Aが「騙しました。やり直しましょう」と認める可能性はまずないでしょうから,訴えを起こさなければならない可能性が高いでしょう。
また,相続人Aが「嘘をついて騙した」,「脅した」ことを証明できるかどうか?も重要な問題です。時々聞くのが,「亡くなった後に市役所や税務署などにいろいろ書類を出さないといけない」などと言われ,指示されるままに印鑑証明を渡し,たくさんの書類に署名押印もしたのだが,ふたを開けてみたら「署名をして実印を押したのは遺産分割協議書だった」というケースです。ご本人は「遺産分割の内容」どころか「それが遺産分割協議書だ」ということさえ知らずに署名しているので,本来は「合意があった」,「協議が成立した」とは言えません。しかし,「こういう内容で遺産を分割するという合意が成立しました」という書類に署名押印をしてしまっているので,「本当は合意していなかった」,「騙された」と証明することが非常に困難です。

③ 相続人全員が「やり直し」に同意した場合
相続人全員が「もう一度やり直しましょう」と同意できれば,①や②のような事情がなくても(あるいは証明ができなくても),問題はありません。ただ,「やり直し」を強制できるわけではないので,一人でも「嫌だ」と言う相続人がいれば,この方法は使えません。

3 その他-遺産分割協議をした時には「ある」と知らなかったが,後になって存在するとわかった遺産はどうなるか?
「ある」と知らなかったものについては話し合いも合意もできません。したがって,新たに見つかった遺産は,既に成立している「遺産分割協議」の対象外であり,「この遺産を誰が相続するのか,まだ何も決まっていない。これから話し合って決める」ということになります。
なお,既に成立した「遺産分割協議」で,「全ての遺産を相続人Cが相続する」と合意していたり,「この遺産は誰,この遺産は誰」と分けた上で「それ以外の遺産は,全て相続人Cが相続する」と合意していた場合,「新たに見つかった遺産もCが相続する」とも考えられます。相続人全員が「どれだけ遺産があろうとなかろうと,全てCが相続する」と了解している場合や,新たに見つかった遺産が少額である場合は,それで問題ないでしょう。
しかし,新たに見つかった遺産の価額が大きい場合は,「この遺産については,既に成立している遺産分割協議の対象外だ」という主張が出て来る可能性があるかと思います。忘れたころに誰かが「あの遺産については分割が終わってないよね」と言い出さないよう,もう一度きちんと話し合っておいた方がよいでしょう。


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監修

弁護士髙木 紀子(たかぎ のりこ)

熊本県弁護士会所属 56期

依頼された事件を単に処理するだけではなく、依頼してくださる「あなた」の幸せを実現します! 「トラブル」の相手はご本人にとって非常に身近な人です。家族・親族が相手となると,どうしても「気持ち」に関わるところが前面に出てきます。でも,こういったお気持ちに関することを無視してしまうと,ご自身がどうしたいか,どんな形になれば「解決した」,「安心した」と言えるのかも見えず,法律上の問題を解決することもできなくなってしまいます。「この人になら,自分の気持ちを話してもいいかな」,「この人になら,『こうして欲しい』,『そのやり方はちょっと違うような気がする』と遠慮なく言えそうだな」,「わからないことがあっても,遠慮せず質問ができそうだな」と感じていただき,問題を解決する「心強い味方」になることができればと思っています。

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