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相続・遺言・離婚・借金問題を解決する熊本の「弁護士法人ときわ法律事務所」

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2023年07月20日 相続・遺言

最近,何人かの弁護士で雑談をする中で,「映画やドラマに出てくるような,〇〇家の当主が亡くなった後,一族の者が集まる葬儀の場で弁護士が巻紙に書かれた遺言を取り出して『では,読み上げます』って言うの,したことある方います?」と聞いてみたところ,A先生より「巻紙に書かれてる遺言なら自筆証書遺言でしょ。それならまず家裁で検認しないと」,「検認をせずに,弁護士が遺言を開封して読み上げたらダメでしょ」と冷静なツッコミを受けました。たしかに…。「公正証書遺言であれば検認は不要だから,公正証書遺言なら『葬儀の席で弁護士が初めて遺言の存在を明かし,その場で読み上げる』ができるんじゃないか」,「公正証書遺言ではなんだか雰囲気が出ない」,「現実ではなかなかドラマのようなことは起きないですね」,「いや,そんなドラマのような状況に巻き込まれたら,犯人と疑われたり殺されたりしそうだから嫌だ」などなど,しばらく盛り上がったことでした。

最近は,「終活」という言葉も一般的になり,エンディングノートを参照したり,講座などに参加されたりして,ご自身で遺言を作成される方も増えているかもしれません。法律が改正され,それまでは「自筆証書遺言は,全文を自筆で書かなければダメ」であったのが,遺産の目録はPCで作成してプリントアウトしたものを添付する方法もOKとなったので,以前よりも作りやすくなっていると思います。
では,亡くなった方の自筆証書遺言を見つけた場合,どうしたらよいでしょう?また,何をしては問題となるでしょうか?

1 自筆証書遺言を見つけたら,家庭裁判所に「検認」の申立
自筆証書遺言を見つけたら,できるだけ早く,家庭裁判所に「検認」の申立を行う必要があります。
申立を行うと,「検認」を行う期日が指定され,全ての相続人に「この日に遺言の検認を行います」という通知が届きます。期日に出席するかどうかは自由ですが,相続人であれば誰でも出席できます。
家庭裁判所で「検認」を行うことで,この時点での遺言の形状や内容が「こうだった」という記録が「検認調書」という形で残ります。その後,遺言が紛失したり,汚れて読めなくなったり,書き換えられたりしても,相続人であれば誰でも,家庭裁判所で「検認調書」の写しを受け取ることで,元々遺言がどんな形状で何が書かれていたか?を確認することができます。

2 開封してもいい?
「何が書いてあるのか」がとても気になりますよね。でも,自筆証書遺言が封印されている場合,勝手に開封してはいけません。封をしたままで保管しておき,家庭裁判所での「検認」期日に開封しなければなりません。
これを待たずに開封した場合,5万円以下の過料を科せられる可能性があります。

3 遺言を隠したり書き換えたりしたら,どうなる?
遺言を見つけ,封はされていなかったので中身を読んだところ,自分に都合の悪いことや,他の相続人に知られたくないことが書いてあった…という場合,「他の相続人は遺言があることを知らないかもしれない。今のうちに捨ててしまおう」とか,「都合の悪いところを塗りつぶして消してしまおう」といった気持ちが出てくるかもしれません。
遺言を隠したり,捨てたり燃やしたり,書き換えたりした場合,「それをした人は,相続の資格が全くなくなってしまう(欠格)」という非常に重いペナルティが設けられています。
「たぶん,遺言があることは自分しか知らない。ばれないだろう」と思っていても,なかなかそうはいかないものですから,悪いことは考えないようにしましょう。
また,一人で自筆証書遺言を見つけた場合,反対に他の相続人から「隠した部分があるのではないか。書き換えたりしていないか」と疑われることがあるかもしれません。そういったリスクをなるべく少なくするためにも,早めに「検認」の申立をしましょう。場合によっては,弁護士に依頼をして遺言を預け,保管してもらうといった対策も必要かもしれません。

4 検認が必要だと知らずに開封してしまった。どうしたらいい?
こういったご相談は時々お受けします。
「自筆証書遺言を見つけたら,勝手に開封してはいけない。家庭裁判所に検認の申立をする必要がある」ということは法律にはっきり書かれていますが,とはいえ,ご存じない方のほうが多いでしょう。「勝手に開けた上に書き換えた。捨てた」といったことがあれば,勿論大問題です。しかし,「法律上のルールを知らずに開けてしまった。大切に保管しており,『検認が必要』だと知った後に家庭裁判所への申立も行っている」といった場合,きちんとそのことを説明すれば,裁判所から叱られたり,過料を科せられることは基本的にありません(※勿論,「だから勝手に開けても大丈夫です」という趣旨ではありません)。「勝手に開けてしまった」ことが原因で,自筆証書遺言が無効になってしまうこともありません。

5 相続の手続を進める上で,「検認」を行っておく実質的な必要性,メリットとは?
自筆証書遺言に「この土地は長男に相続させる」,「この預金は長女に相続させる」等と書かれていた場合,長男は土地の名義変更のために法務局に,長女は預金の払戻を受けるために預金のある銀行に,遺言を持って手続に行くことになるでしょう。
この場合は通常,法務局でも銀行でも,「遺言が自筆証書遺言であれば,家庭裁判所で検認を行って,家庭裁判所が作成した『検認済証明書』がついたものをお持ちください」と言われます。
したがって,「自筆証書遺言」に基づいて相続の手続を進める場合,検認は必須ということになります。

6 遺言がある場合,検認は必ず行わなければいけない?
公正証書遺言は,検認の必要がありません。
自筆証書遺言も,法務局に保管する制度を利用していた場合は,検認は必要ありません。
どちらも,作成や保管の時点で「このような体裁、内容であった」ことが確認され,その状態のまま保管されているので,改めて家庭裁判所で確認をし,記録を残す必要はないのです。
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